「壊れてから直す」を卒業して、5拠点の設備保全を、EAMicでひとつに

 数の生産拠点を持つ化学メーカー・中化ブルースカイ。生産体制の拡充が進むなか、拠点ごとに異なっていた設備保全のやり方をどう標準化するかが、経営上の課題となっていました。EAMによる情報の「見える化」と、予防保全への転換。その取り組みの背景から導入後の変化、今後の展望までを伺いました。

企業名
中化ブルースカイ
業種
化学品製造(フッ素化学・環境関連素材)
事業内容
化学材料の開発・製造、環境ソリューション事業。複数の生産拠点を展開
活用領域
設備のライフサイクル管理/点検・巡回/予防保全(PM)/配管腐食管理

導入前の課題
「あの人にしか分からない」が、現場に積み重なっていた
属人化とノウハウ継承の壁
点検や整備の進め方が、担当者一人ひとりの経験と勘に依存していました。「あの設備はあの人でないと分からない」という状態が常態化し、若手への技術継承や引き継ぎの仕組みづくりが追いついていなかったといいます。
拠点ごとにバラバラな管理
SOP(標準作業手順)や設備台帳の管理方法が拠点ごとに異なり、保全履歴や点検内容を他拠点と共有しづらい状況でした。対応も設備が止まってから動く事後対応が中心で、担当者は日々“火消し役”に追われていたといいます。

EAM導入

設備一台ごとにQRコードを。情報を、現場の手のひらへ

 こうした課題を解決するため、中化ブルースカイは設備管理システム(EAM)の導入を決定しました。選定にあたって重視したのは、現場の担当者が無理なく使い続けられることです。設計・製造・据付・保全・点検・廃棄まで、設備に関わる情報を一つのシステムに集約。PCに加えてスマートフォンアプリにも対応し、「現場での使いやすさ」を起点に運用を組み立てました。

 各設備には固有のQRコードを貼付。スマートフォンでかざすだけで、図面・点検履歴・保全記録を瞬時に呼び出せます。ベテランの記憶や紙の台帳に頼ることなく、誰もが同じ情報にアクセスできる——設備一台ごとに「カルテ」を持たせるようなイメージです。「いつ・誰が・何をしたか」が確実に記録に残り、作業の流れの管理、経緯の追跡、稼働状況の把握が大きく前進しました。

「以前は倉庫まで足を運んで、在庫が“あるか・ないか”を確認していました。今は設備と情報が紐づいているので、知りたいことがその場ですぐに分かります。落ち着いて保全業務に取り組めるようになりました」
― 設備保全 ご担当者

各拠点の取り組み

5つの拠点が見つけた、それぞれの“正解”

 EAMは導入して終わりではなく、現場で使いこなしてこそ価値が生まれます。中化ブルースカイの各拠点が実践している、5つの活用事例をご紹介します。

01郴州(チェンジョウ)拠点

定期メンテナンス計画をシステムに集約し、抜け漏れをなくす

点検・巡回、給油・潤滑、計量機器の検定、特殊設備の法定検査といった「定期的に発生する保全業務」をすべてシステム上で管理。対応漏れを防ぎ、設備の稼働水準を継続的に高めています。
  • 機械設備:日常巡回・安全点検・機能回復
  • 電気・計装設備:日常点検・機能テスト
  • 計量機器:検定時期の自動リマインド、台帳の自動更新
  • 特殊設備:法定検査のリマインド、台帳の自動更新
運用開始から半年あまりで、平均故障間隔(MTBF)は着実に改善しています。
02上虞(シャンユー)拠点

整備前のSOPを「1ステップずつ確認」、全工程を記録に残す

装置・設備・SOPの数が膨大なため(21システム、15,218台、SOP 2,012件)、「教育だけでは覚えきれない」「作業の経緯をたどれない」「結果を確認しづらい」といった悩みを抱えていました。そこで121組の整備前処理SOPをEAMに取り込み、準備作業を“前倒し”で管理。アプリ上で1ステップずつ確認しながら進める方式に切り替えたことで、すべての工程が記録に残り、いつでもさかのぼって確認できるようになりました。
「アプリの手順どおりに進めるだけで、誤操作を防げます。資材処理の進み具合も追えるので、置換が完了するまでは作業に入らずに済む。現場が安心して動けるようになりました」
― 現場作業・整備 ご担当者
03太倉(タイツァン)拠点

事後保全から予防保全(PM)へ、整備の考え方を切り替える

「週次計画」を起点に、月次・再生周期・年次の大規模整備計画を順次EAMへ移行しました。点検巡回・状態監視・信頼性データと組み合わせることで、計画的な保全の比率と作業効率を大きく高めています。不具合が表面化する前に手を打つ——“事後対応”から“予兆をとらえて先回りする”保全への転換です。
04環境ソリューション部門

肉厚測定アプリで、配管の点検・腐食監視をひとまとめに

化学プラントの生命線ともいえる配管設備について、基礎データ・検査・腐食監視・予兆検知・対処までをアプリに集約しました。スマートフォンでかざせば配管の識別番号が表示され、必要な情報をその場で確認できます。
  • 肉厚測定データの集計・整理がラクに
  • 配管腐食の監視を継続的に実施
  • 腐食・肉厚測定をピンポイントで実施できる
05西安(シーアン)環境事業部門

設備に合わせた「検査メニュー」をオーダーメイド

設備や状況に応じて、最適な検査手法を使い分けています。
  • 小口径配管の外観検査:浸透探傷(PT)
  • 腐食性流体の配管溶接部:放射線透過試験(RT)
  • アクセスしにくい配管溶接部:超音波探傷(UT)
  • 硬度検査・ガイド波超音波 ほか
内部の不具合には工業用内視鏡を使い、設備の内部まで踏み込んで点検しています。比較的手頃なコストで導入でき、「小さな投資で大きなトラブルを未然に防ぐ」運用を実現しています。

導入後の効果

“火消し役”から、“先回りできる現場”へ

設備資産と稼働状況を一元化したデータベースを構築。拠点をまたいだ情報共有が円滑に
点検巡回の効率化と、設備の稼働状態のリアルタイム把握を実現
故障の予兆を早期に察知。生産停止リスクを未然に防げる環境が整いつつある
点検項目の統一とSOPのデジタル化で、属人化を解消しノウハウを蓄積
予防保全を軸とした保全管理体制を確立し、設備の安全性が向上
保全にかかるトータルコストを削減

 設備が止まるたびに“火消し”に追われ、手入力や紙の処理に時間を奪われ、トラブルのたびに責任を問われ、多くの保全現場が抱えてきたこうした悩みに対して、EAMは着実な解決の道筋を示しています。

今後の展望

データが厚みを増すほど、保全はもっと賢くなる

 設備台帳や修理履歴が蓄積されるほど、点検の頻度や項目をより最適化できるようになります。中化ブルースカイは今後もEAMを活用しながら、予防保全のさらなる高度化と、設備停止時間の短縮に取り組んでいきます。拠点ごとの“現場の知恵”を全社の資産へと変えていく挑戦は、まだ始まったばかりです。

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